《はじまり》
80年代初め、ある蕎麦粉会社の社長と出会い、その社長のすすめで製粉機を使用してみたのです。
それまでは蕎麦に特別な感情などなかった私。
しかしそれは、目からうろこの瞬間でした。
「本物の蕎麦とはコレだったのか…」
自分が知っている蕎麦とは程遠い、まさに本物の蕎麦の魅力をその時知ることとなりました。
以来私は、蕎麦にのめり込んでいくのです。
《あまりの違いに愕然》
それ以前の私にとって、蕎麦とは黒くてぐにゃぐにゃした、うどんが細くなったようなイメージ。さして際立った魅力を見つけられずにいました。
しかし、玄蕎麦(皮を剥く前の蕎麦の実)から自身で製粉し、正真正銘の3たて(挽きたて・打ちたて・茹でたて)を食してみたところ気が付きました。
もっちりした中にもサックリした食感、香りはさることながら、豊かな甘みが口いっぱいに広がります。
私は衝撃をうけました。
そこで先ほどの言葉をもらすこととなります。
この蕎麦の本当の美味さを引き出すには、つゆにも相当こだわらなければなるまいと思い立ち、さらに研究を重ねたのです。
《そしてこだわりはつゆへ》
出汁には昆布をはじめ、本節、宗田鰹、鯖節もあらゆる産地を試しました。
その結果、昆布は島物の2等をあえて使用することに決めました。京料理などに使う1等では上品過ぎて負けてしまう。3等では雑味が出るからです。
その昆布にピッタリと馴染むカビ付けの枯節も見つけました。
中部地方ならではの「たまり」を使用せず、蕎麦の甘味を引き出すスッキリとした醤油を用い、出汁とあわせました。
長い時間と手間をかけ、理想を追求した結果、最高の蕎麦が完成したのです。
《本当の蕎麦を楽しんで頂くために》
しかし一つ悩みがありました…。
前述したように、蕎麦は「挽きたて・打ちたて・茹でたて」こそが最高です。
蕎麦の本当の魅力を知るには、お手元に出されたらすぐ食べて頂くのが一番です。
しかし、なかなか手をつけて頂けないことも多いのです。
次回足をお運び頂いた際はぜひ、できたての蕎麦を口にしてみてください。
今までとは違う、本当の蕎麦の楽しみ方を知ってお帰り頂けると思います。
店主
《蕎麦の新たな可能性にチャレンジ》
本物の蕎麦を追求した結果、さらにその一歩先へ可能性を見出すようになりました。
蕎麦はもともと油との相性がよく、洋食とも合います。
塩とオリーブオイルをからめ、イタリアン風の塩蕎麦を開発。大変ご好評を頂きました。
それがいつしかオリジナルのコース料理へと発展したのです。
さらに、リスドール(フランスパンの粉)と蕎麦粉を配合したパンを商品化。試行錯誤の末、蕎麦粉のパウンドケーキ、焼きドーナツなど、デザートまで幅を広げています。
蕎麦のあらたな一面を感じて頂けると思います。